ことあるごとに、実機が目の前に有る時にMerlinのダイナミックバランス講座なるものを開催してきた訳ですが(笑)
さっぱり浸透しないで、同じ人からもどうやるのでしたっけ?とまた聞かれたり。
今年になってから話題のMoviとか(加速度センサーとブラシレスモーターを使った能動的スタビライザー?)に対して、
Merlinとか(慣性モーメントを受動的に利用するタイプのスタビライザー)の事をなぜかダイナミックバランス型スタビライザーと呼ぶ風潮が散見されたり。
目の前に実機が有れば簡単に説明できると思っていたのですが、意外とそうでもなかったのかも(笑)
Merlinのダイナミックバランスって何なのだろう、それさえ追い込めればもっとオペレートがスムーズになるのではとモヤモヤしていらしゃる方には朗報となりますでしょうか??
言葉だけでシンプルに説明してみます。
ダイナミックバランスの調整とドロップタイムの調整を混同している人が居ますが、別物です。
スレッドを回転させた時に前後、左右、あるいはその両方に傾こうとする力を発生させないようにする調整です。
Steadicamにおいてはただそれだけ、「回転させた時に傾こうとする力を発生させない」。 それ以上でも以下でもありません。
Steadicam Archer など垂直のポストをギンバルで保持しているタイプでは単純にポストをくるくる回転させてどちらに傾きが出るかを見ながら追い込んでいきます。
Merlinの場合も基本的には同じ事なのですが、構造的にくるくる回す事は出来ないので、 180度くらい回転させて傾きを見て判断しながら追い込みます。
(クルクル回す方法も有るのですが、とても危険なのと あまり必要がないのでここでは述べません(笑)。
実際のオペレートではくるくる勢いよく回す事など通常ありえないのでこれで十分です。
http://www.tiffen.com/dynamic%20primer.pdf
これが正しい解説書ですが、ほとんどの人は開いた10秒後に黙って閉じてしまうので、理屈は抜きにしてシンプルに調整手順だけを書きます。
まず、ダブテールプレートのHの穴にカメラの重心が来るように取り付けます。
前後はD.T.プレート自体の取り付け位置を後で調整できるので大体で良いですが、左右はD.T.プレートの左右取り付け位置調整機構がMerlinには無いので、厳密に行う必要が有ります。 ←ーーーーー(これは重要なポイント、試験に出ます。)
たまたま うまい位置に穴が有れば良いのですが、そんな偶然を期待しても仕方が無いので
左右にスライドさせて固定位置を無段階に調整できるアルカクランプ等を使いましょう。(これは後ほどダイナミックバランスの左右方向の調整にも使います。)
カメラを装着したD.T.プレートをステージに載せます。
この時、重心の位置はギンバルのやや後ろ、(左右はステージの真ん中に来ます。)ざっくり置いてください。細かくは後に調整します。
そして、その状態から まずスタティックバランスとドロップタイムを調整します。
これらは、いろんな所ですでに語り尽くされているのでここでは詳しく述べません。
スタティックバランス調整で左右方向はトリムローラーは真センターの位置にして、アルカクランプ上のカメラを微妙に左右に動かしてバランスを取ります。
↑(これもやや重要、こんな事今まで誰も言いませんでした。)
いよいよ 静止状態で水平を保っているスレッドに対してD.バランスを調整します。
ガイドの部分を操作して普段オペレートするようなスピードでスレッドを回転させてみてください。180度で十分です。
この時 すでにカメラが水平を保ったままパンするようでしたら、ラッキーな事に偶然 D.バランスが取れてしまっている状態です。
でなければ、傾きがでるのでそれを見てD.バランスを追い込みます。
(注意しないといけない事は、回転させるたびに上を向いたり下を向いたり毎回傾きが違ってしまう時は、
ドロップタイムが長過ぎるのか、ギンバルやその他の固定箇所のガタの影響、もしくは あなたの指先のスキルが足りないのか、
のいずれかなので、この先に進まずに まずそれを解決してください。)
何度回転させても同じようにレンズが下を向く場合、D.T.プレートの取り付け位置が前過ぎています。
ステージの左端のメモリを見ながらプレートを少し後ろにずらして固定します。
すると、静止している状態ではスレッドが後ろを下に傾いた状態になるので、トリムローラーを下向きに回して水平になるようにします。
で、また回転させてみます。 回転によってレンズが上を向いてしまったら D.T.プレートの位置が後ろ過ぎです。少し前にずらして・・・・・・
また今度は静止状態で水平になるようにトリムローラーを上向きに回して・・・・・・・
こういう事をカメラが水平回転するようになるまで前後方向で(そして必要であれば左右方向で)繰り返します。
ここでのポイントは、一見同じ事のように見えるトリムローラーの調整とD.T.プレートの位置調整が
実は違う意味を持っているという事を明確に意識する事が重要です。
D.T.プレートの位置調整はスレッドの形、重量分布を変化させているのに対して、
トリムローラーの調整は上記は一定で支持するポイントを動かしています。
スタティックバランスの調整のみにおいては同じ調整の延長のようにこれらが語られることが多かった事が
ダイナミックバランス調整を理解する上でのちょっとした盲点になっているのかもしれません。
左右方向に対するD.バランス調整機構はSteadicamにはデフォルトでは備わっていません。
それはスレッドも従来のカメラも前後方向には明らかに非対称な形、重量分布であるのに対し
左右はほぼ対象形である為、省略されているものと勝手に理解しています。
実際、左右方向の調整無しでオペレートしていても特に問題は感じません。
しかし軽量で慣性が小さい割には左右方向の重量分布の非対称なDSLRやBMPCCなどは
そこまで面倒見てやった方がさらに快適にオペレートできそうな気がします。
ここまでが、Merlin のダイナミックバランス調整に関する 脳天気なハッピーなお話です。
実はちょっと悲しいお話も有るのですが、長くなってしまったので またどこかで(笑)。
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